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【第9回】体重管理に大事な生活習慣とは?ライフスタイルの変化とBMIの関連

東京大学高齢社会総合研究機構 
村山洋史

体格指数(Body Mass Index; BMI)は、死亡率や疾病発症などの優れた予測因子として知られています。また、健康のためだけでなく、「太った」「痩せた」など、体型の変化に敏感な人も多いはずです。体重変化には、喫煙、飲酒、運動習慣などのライフスタイルが強く関連していることが知られています。では、一体どのライフスタイルがBMIに関連するのでしょうか?1987~2006年(第1回~第7回調査)までの7時点(19年間)のデータを用い、日本人高齢者のBMIの推移に対し、喫煙、飲酒、運動がどのように関連しているかを検討しました。

特に、同じ対象者に対して複数回調査を行っているという強みを活かし、「ある調査時点(t)の喫煙、飲酒、運動の習慣が、次の調査時点(t+1)のBMIに関連しているか」および「ある調査時点(t)から次の調査時点(t+1)までの喫煙、飲酒、運動習慣の変化が、次の調査時点(t+1)のBMIに関連しているか」の2つを解析しています。

今回注目した3つのライフスタイルのうち、喫煙のみがBMIに関連していました。タバコを吸っている人ほどBMIが低く、また、タバコを止めた人ほどBMIが高いという結果でした。また、年齢との交互作用を検討した結果、「タバコを吸っている人ほどBMIが低い」という関連は、年齢が高くなるほど弱くなっていくことが分かりました。

タバコと食欲の関連は、マウスを用いた実験でも人を対象とした研究でも示されており、ニコチンを摂取するほど、甘いものや高カロリーのものを摂取しなくなると報告されています。今回の研究でも同様の傾向が示されことになります。また、そもそも年齢が高いほど、喫煙率が低い傾向があるため、喫煙がBMIに及ぼす影響も、年齢が高いほど相対的に弱くなっていることが伺われました。

運動は対象者全体での分析では関連は見られませんでしたが、性別で分けて分析をしたところ、男性において、運動を行うこと、および運動を始めたり増やしたりすることがBMIの高さに関連していました。運動による筋肉の付きやすさや脂肪の燃焼のしやすさには性差があり、男性の方が筋肉が付きやすく、脂肪が燃焼しやすいといわれています。ですので、男性で運動との関連が強くみられたと考えられます。

ライフスタイル、年齢、性別といった要因は、複雑に関係し合いながらBMIに関連していることが分かりました。「タバコを吸えばダイエットできていいじゃないか!」と思う人もいるかもしれません。しかし、欧米人に比べてBMIが低く、かつ、体重が減少していきがちな日本人高齢者では、健康管理をする上で、体重減少にはより注意を払う必要があります。そのため、禁煙や運動を組み合わせて体重維持の方法を考えていくことが重要といえます。

図1:ある時点(t)の喫煙行動は、次の観察時点(t+1)でのBMIの低さに関連していた

<出典>
Murayama H, Liang J, Shaw BA, Botoseneanu A, Kobayashi E, Fukaya T, Shinkai S. Changes in health behaviors and the trajectory of body mass index among older Japanese: a 19-year longitudinal study. Geriatrics & Gerontology International 2017; 17(11): 2008-2016.

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