研究成果(ヘルシーエイジングと地域保健研究)
ヘルシーエイジングと地域保健研究
1)高齢期の虚弱化(フレイル)を先送りし、健康余命を延伸する社会システムを開発
超高齢化が進む昨今、後期高齢期のフレイル※をいかに先送りするかが、喫緊の課題です。
我々は、(独)科学技術振興機構社会技術開発センターJST戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)の助成を受け、科学的根拠に裏付けされたフレイル予防の理論と地域の力とを合わせて、「高齢期の虚弱化(フレイル)を先送りし、健康余命を延伸する社会システムの開発」に取り組みました。
※フレイルとは、高齢期に生理的予備能が低下することで、ストレスに対する脆弱性が亢進し、さまざまな健康障害を起こしやすいハイリスクな状態を指す。
■科学的根拠の確立
中年期までは、心肺機能を高める運動、カロリー控えめの食生活、仕事や私生活でのストレス軽減などが健康維持のポイントであったかもしれません。しかし、高齢期の生活では、“フレイル”を先送りすることが健康長寿の秘訣です。『基礎体力を維持する運動、十分な栄養の補給、社会との関わりを持ち続けることが、フレイルの先送りにつながる』ということが、我々の疫学研究によって明らかになりました。
■「フレイルを先送りし、健康余命を延伸する社会システム」の提案
では実際に、地域でどのようにフレイルの予防を進めていったらよいのでしょうか?
1次予防:住民と行政、各種団体から成るコミュニティ会議を設立し、高齢者が日常的に集える場づくりを目指す
私たちは、次のようなシステムが地域に必要だと考えました。
2次予防:体力測定会を開催し、セカンドライフの健康づくり応援手帳を活用しながら、体力、栄養状態、社会活動状況 を定期的にモニタリングする
3次予防:フレイルになっても状態を改善できるよう教室を開設する
上図に示す、3つのシステムが整うことで、「体力をつける・低栄養を予防する・社会参加を促進する」というフレイルの予防に欠かせない要素を、普段の生活で自然と満たすことができると考えています。
■「フレイルを先送りし、健康余命を延伸するコミュニティ」の創造
新たなシステムを取り入れたまちづくりに、兵庫県養父市と埼玉県鳩山町の皆さんと一緒に挑戦しました。
■「フレイルを先送りするまちづくりお助けグッズ」の作成
2つの地域の取り組みの過程で、他地域での使用可能なお助けグッズを作成しました。
- セカンドライフの健康づくり応援手帳
この手帳は、フレイル2次予防の体力測定会で使う使用するツールです。体力測定会で測定した体力や栄養状態といった機能的健康度を簡単に、また長期的にセルフモニタリングでき、改善に向けた取り組みが出来るよう開発しました。手帳には、フレイルを先送りするための知識も含まれていますので、3次予防の教室でも教材として活用できます。 (体力測定の方法はこちらをご覧ください。)
コンテンツ
15の質問で簡単に虚弱の可能性を判定できるチェックシート
体力・栄養状態・社会参加状況が評価できるモニタリングシート
虚弱を先送りするための知識やアドバイス
日々の健康づくりをサポートするスケジュール帳
- 3次予防の教室運営マニュアル ~毎日元気にクラス 指南書~
この教室運営マニュアルは、3次予防の教室で使用するツールです。プログラム開発時の無作為化比較試験で培ったノウハウと、養父市での取り組みで培ったノウハウを結集して作成しました。運動、栄養、社会プログラムの全20回の教室内容が、専門家でなくても教室が担えるよう、簡単なセリフつきで掲載されています。養父市では、シルバー人材センターの会員がこれを教本に教室を運営しています。
コンテンツ
第1章 健康で安心して暮らせるまちをめざして
第2章 運動プログラムの進め方
- ウォーミングアップ※1
- ストレッチ
- 筋力運動
- コーディネーション運動
※:本書では養父市生まれの「やぶからぼうたいそう」を掲載。ラジオ体操やその他のご当地体操にカスタマイズすることも可能。
第3章 栄養プログラムの進め方
- 虚弱化を先送りする食事の基本
- 自分の食事をチェック
- 量を意識して食べる
- 簡単お手軽クッキング
第4章 社会プログラムの進め方
- 外出交流を楽しもう:傾聴の寸劇とコミュニケーションゲーム
- 外出交流を続けるために:転倒しない環境づくり
- 地域で継続して健康づくりを行うために:パッケージ期間終了後の教室の進め方を話し合おう
第5章 体力測定の進め方
付 録 教室進行役のセリフその他、「体力測定学習ビデオ」や「虚弱予防教室で使用する教材(パネルや紙芝居等)」を作成しています。セカンドライフの健康づくり応援手帳ならびに毎日元気にクラス&体力測定指南書の購入を希望される方はこちら。
「フレイルを先送りするまちづくりお助けグッズ」に関するお問い合わせはこちらまで
chiikihoken.t●gmail.com(メール送信の際は「●」を「@」になおしてください)