研究プロジェクト

ヘルシーエイジングと地域保健研究

(テーマリーダー:北村明彦)

1.コミュニティーベースの縦断研究

1)草津研究(=群馬県草津町)

2001年度より草津町と共同研究契約を結び、65歳以上(2005年度までは70歳以上)の住民を対象とする介護予防健診を毎年実施し、データの蓄積を行っている。加えて、隔年で健診未受診者に対する調査を実施し、町内全高齢者の状態把握に努めている。また、転帰情報(死亡、転出入)、要介護認定、医療費・介護費に関するデータも収集し、蓄積を行っている。

【資料】

 2011年度_草津町にっこり健診_個人結果票の例

 個人結果票の見方・判定方法

 にっこり健診あなたの健康度判定方法

 

 

2)鳩山研究(=埼玉県鳩山町)

2001年度より地域福祉ボランティアの育成に係わる介入研究や社会活動性調査(8年間で計4回)を行ってきた。鳩山町との共同研究契約のもと、2010年度からは65-84歳住民からの層化無作為抽出標本を対象とした長期縦断コホート研究を開始した(ベースライン調査には約750名が参加)。あわせて、転帰情報(死亡、転出入)、要介護認定、医療費・介護費に関するデータも収集していく予定である。

 

 

3)養父研究(=兵庫県養父市)

2011年度より養父市と共同研究契約を結び、ポピュレーションアプローチによる介護予防活動の評価を行っている。ベースラインとして65歳以上の全高齢者に対する質問紙調査を実施し、およびアウトカムとしての転帰情報(死亡、転出入)、要介護認定、医療費・介護費に関するデータ収集を実施している。

 

 

2.血清β2-ミクログロブリン(β2-M)を指標とした老化の一次予防プログラムの作成

1)「変性β2-M仮説」の検証

研究所プロジェクト研究(TMIG-LISA)で見出され老化指標として有望な血清β2-Mの生物医学的意義を解明すべく、①性、年齢階級別出現頻度、②保存血清を用いたnested case-control studyを実施する。

2)血清β2-M濃度の修飾可能要因の解明

血中β2-M濃度の修飾可能要因がわかれば、その知見に基づいて(暫定的な)老化予防プログラムを作成することが可能である。これまでTMIG-LISAやテーマ研究で得られた合計約2,000人の横断的および縦断的データを分析し、β2-M濃度の関連要因を明らかにし、『老化の一次予防プログラム』の開発を目指している。

3.虚弱スケールを応用した虚弱予防プログラムの作成

虚弱は、後期高齢期に起こりやすい障害(progressive disability、別名「廃用症候群モデル」)の主な背景となる多因子症候群(multifactorial syndrome)である。虚弱を理解しその予防につながる知見を得ることは、健康長寿に向けた戦略づくりに大きく貢献する。高齢者の虚弱状態を把握し、スクリーニングするための虚弱スケールを開発し、その関連要因、および虚弱が影響を与えるadverse health outcomeについて検討を行っている。

また、虚弱予防を目指した介入プログラムを開発し、鳩山コホートにおいて、コホート内RCTによる効果検証研究を実施している。プログラムの短期的効果の評価に加え、長期縦断研究を活用した中長期的効果の評価も目指している。

4.地域包括的介護予防推進システムの提案

地域で介護予防の実をあげるには、それぞれの地域の実情に応じてハイリスク戦略(リスクを保有する高齢者向け事業)とポピュレーション戦略(一般高齢者向け事業)をうまく組み合わせ、住民参加を図りながら、費用対効果のよい地域保健システムを作る必要がある。これまで実施してきた長期縦断研究、および介入研究の成果を踏まえ、他自治体のモデルとなる効果的、効率的な地域包括的介護予防推進システムを提案することを目指している。