研究成果トピックス

【第4回】日本の高齢者の社会的孤立は進んでいるか

東京都健康長寿医療センター研究所      
社会参加と地域保健研究チーム 小林江里香


一人暮らしの高齢者が増加する中で、高齢者の「社会的孤立」への注目が高まっています。しかし、もちろん、独居者のすべてが孤立しているわけではありませんし、家族と同居している高齢者の中にも、家族以外との交流はほとんどないという人がいるでしょう。これまでの研究では、何を孤立とするかの定義や調査地域が研究によって異なっていたため、社会的に孤立した高齢者の割合が実際に高まっているのか、変化の実態は明らかではありませんでした。

そこで、本研究では、同居家族以外(別居の子ども、友人・近所の人・親戚)との対面・非対面での交流頻度の合計が週に1回未満の場合を「非同居者孤立」、独居でかつ非同居者孤立の条件を満たす場合を「完全孤立」として、これら2種類の孤立割合の変化を調べました。分析には、1987年、1999年、2012年に初めて調査に参加した、それぞれの時点の新規対象者を用いましたが、1999年の調査では60代の新規対象者がいなかったため、3時点での比較は70歳以上のみで行い、60歳以上の比較は、1987年と2012年の2時点で行いました。

まず、「非同居者孤立」の割合を男女合計でみると、60歳以上では約24%、70歳以上では約27%で、調査時点による大きな差はありませんでした。しかしながら、図1の通り、男女別にみると、孤立割合は、男性では増加したのに対し、女性では減少しており、変化の方向が逆でした(①)。他方、「完全孤立」の割合については、独居率の上昇に伴い男女とも増加傾向にはありますが、男性における孤立割合の増加が顕著であり、女性では統計的に有意な変化はみられませんでした(②)。つまり、どちらの基準でも、孤立化が進んだと言えるのは男性高齢者のみでした。

図1 2つの基準でみた社会的孤立割合の変化:男女別分析

注)独居者割合が直近の国勢調査と近似するように回答者の偏りを補正

それでは、「非同居者孤立」の割合が変化した背景には、どのような要因があるのでしょうか。1987年と2012年の60歳以上のデータの分析をさらに進めると、男性における非同居者孤立の増加には、近居子がいる人や近所づきあいの減少が関連していることがわかりました。特に、親しい近所の人がまったくいない男性は1987年には3人に1人程度でしたが、2012年には過半数を占めるまでになっていました。

一方、女性では、教育年数が高い人ほど孤立していない傾向があり、最近の高齢者ほど高学歴であることが、非同居者孤立の割合の減少とも関連していました。しかし、男性ほどではありませんが、女性でも近所づきあいは減少しており、高学歴化だけでは孤立割合の減少を十分に説明できませんでした。社会活動を楽しめるような施設・サービスの増加や、女性が家の外で活動することへの意識の変化など、本研究では測定していない別の要因の関与も考えられます。

本研究の結果は、「高齢者」の中にも異質な集団が存在しており、「高齢者」とひとくくりにすることができないことを示しています。性別にとどまらず、高齢者を特性の異なるいくつかの集団に分けて孤立の要因分析を行うことで、より効果的な孤立予防の対策が可能になるでしょう。データ(エビデンス)に基づき、何によって高齢者を分けるのが適切なのかについての知見を蓄積していくことが重要です。

<出典> 小林江里香・深谷太郎:日本の高齢者における社会的孤立割合の変化と関連要因-1987年,1999年,2012年の全国調査の結果より.社会福祉学, 56(2) : 88-100 (2015).

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