研究概要
地域ケア情報見える化サイト「ミルモネット」プロジェクトのご紹介
1)「シームレスな社会参加」とは
東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チームでは、「シームレスな社会参加(途切れない社会参加)を促進する地域包括ケアシステムモデル」を推奨しています。
「シームレスな社会参加」とは、高齢者の社会参加のステージは重層的に移行していくものであると捉え、Productivity(プロダクティビティー)の理論にもとづき、高齢者の社会参加・社会貢献を操作的に次の5つの社会活動のステージで定義しています;①就労、②ボランティア・地域貢献活動、③趣味・稽古ごと、④友人・隣人等との私的な交流、⑤要介護期の通所サービス。その上で、個々の健康状態や生活状況に応じて①~⑤のいずれかの活動に参加し続つけます。
例えば、元気なうちは、金銭的な報酬を伴う就労や地域活動やボランティア活動を行います。こうした社会貢献活動に負担を感じ始めたら、気軽にできる趣味・稽古ごとへ移行する人が多いでしょう。さらに健康度(生活機能)が低下すると、友人・知人等との私的交流や近所付き合いへと移行します。そして、要支援・要介護状態になったとしても、送迎付きの通所サービス(デイサービス)や近所のサロン、カフェの利用を通して人や地域と交流し続けることが望ましいでしょう。しかし、現実には、次なる社会活動への移行は必ずしも容易でなく、ボランティアを引退した後、役割が無くなり孤立する人や、趣味グループが解散したため閉じこもる人も少なくありません。
2)地域包括ケアシステムの中核となる地域包括支援センターの役割と課題
地域包括支援センターには、高齢者がそれぞれの状態に応じて適切な社会活動に移行することを、関係機関と連携しながら支援・コーディネートすることが期待されます。例えば、ボランティア活動の継続が困難になり始めた場合には、本人やボランティア団体と地域包括支援センターが繋がっていれば、地域包括支援センターを通して地域の趣味活動やサロンなど本人の状態や趣向に適した次の活動を紹介し、スムーズに移行することができるでしょう。
また現在の日本は、企業や住民団体等による豊富な社会資源に恵まれています。つまり多様な主体(企業・事業所、NPOやボランティア団体、町会等の地縁組織等)が、高齢者の豊かな生活の実現に寄与する社会参加活動や生活支援サービス等を展開・提供しています。しかし、介護保険サービスに加えて、これらの介護保険外のインフォーマルな活動やサービスに関する情報が地域に埋もれていたり、散乱しているために、必ずしも地域包括支援センター等の専門職が適切に情報整理・提供できていないのが実情ではないでしょうか。
3)地域ケア情報見える化サイト「ミルモネット」の開発
上記の課題を解決すべく、当研究チームは平成27年度より、独立行政法人日本学術振興会『課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業』(実社会対応プログラム)の助成を受け、(株)ウェルモと協働で「地域ケア情報見える化サイト(ミルモネット)」の開発を進めてきました。
「地域ケア情報見える化サイト(ミルモネット)」とは、高齢者の豊かな生活に寄与する介護保険・介護保険外の多種多様なサービス・プログラム(生活便利サービス、社会参加活動を促進する趣味・学習・運動・ボランティア活動等を想定)に係る情報をWeb上に集約し、タブレットやパソコンの端末一つでそれらの情報を管理・更新・検索できるシステムです。そして本サイトは、大田区および同区内の地域包括支援センターの皆様のご協力のもと、地域包括支援センターやケアマネジャーが活用可能な専門職向けに開発しました。そのため、ユーザー目線の使いやすいサイトであると自負しています。
本サイトをご活用いただくことにより、これまで地域に埋もれていたり、散乱している高齢者の豊かな生活の実現に寄与する社会参加活動や生活支援サービス等を「見える化」します。そして、専門職による社会資源情報の整理・紹介業務を効率化し、高齢者の豊かな生活を支援します。
※【PDFリンク】(地域ケア情報見える化サイトプロジェクト概要)