研究概要

草津町研究:「介護予防」共同研究事業

 

1)研究事業の概要

草津町と当研究所は、2001年から現在に至るまで、(1)高齢者の健康余命の延伸、(2)介護予防のまちづくりをすすめて介護保険・医療保険の安定的運営を図ること、を目的にシニア世代を対象とした共同研究事業を実施してきました。そして本事業を継続していくことで、全国に「介護予防・草津モデル」を発信することを目指してきました。本事業の概要は、以下の通りです。

 

■いきいきアンケート、高齢者生活実態調査

2001年、2003年、2005年に70歳以上の全町民を対象に、自宅訪問による対面調査「いきいきアンケート」を実施しました。2007年以降は、対象の年齢幅を65歳以上に拡げ、高齢者生活実態調査を2~3年おきに実施しています。このアンケートでは、①日常生活動作能力、②高次生活機能、③移動能力、④既往歴、⑤社会参加活動、⑥抑うつ度、⑦運動習慣などの項目を調査し、その結果を分析しています。

■にっこり健診

2002年より現在まで毎年、65歳以上(2005年までは70歳以上)の町民を対象に「にっこり健診」を実施しています。 この健診では、①医学問診による既往歴、現病歴、生活習慣などの回答、②採血による血液検査、③動脈硬化度測定、③体組成測定、④身長・体重・腹囲、⑤歩行速度、握力などの体力測定、⑤認知機能検査、⑥口腔機能検査、⑦生活問診および質問紙調査でのアンケート等を行い、それらのデータの分析を行っています。

■介護予防教室

「いきいきアンケート」や「にっこり健診」の結果をもとに、介護予防教室を実施しています。教室の名称は、「ヘルスアップ教室」、「転倒予防教室」、「元気アップ教室」、「スプリング」など年度により様々ですが、介護予防・虚弱予防という共通の目的で一貫して実施しています。

■介護予防事業の効果検証

「いきいきアンケート」「高齢者生活実態調査」と「にっこり健診」「介護予防教室」から得られた情報のほかにも、草津町と研究所で「データ取扱い要領」を交わし、転帰情報(死亡、転出等)、要介護認定、医療費・介護費に関するデータの提供を受けています。これらのデータを活用し、本研究事業の効果検証を行っています。

日本動脈硬化縦断研究

2003年の「にっこり健診」を受診し、同研究への参加に同意していただいた約400名の方を対象に、健診後の動脈硬化性疾患(脳卒中や心筋梗塞など)の発症の有無を追跡してその原因を探る全国的な共同研究(日本動脈硬化縦断研究:http://jals.gr.jp/index.html)に参加しました。ご本人やご家族の申告により発症が疑われた場合は、同意を得たうえで発症時に受療した医療機関における医療記録の閲覧調査も行いました。この研究のために同研究事務局に提出したデータは、2003年のにっこり健診の各種データ、及び脳卒中・心筋梗塞の発症があった場合は、発症日時と病型、診断根拠の情報です。現在、全国約70の市町村、9つの職域における同様の調査から得られた約12万人のデータを統合し、動脈硬化性疾患の危険因子の解析が進められています。

 

以上の研究にあたっては、データの研究利用に同意した方もしくはアンケートにご協力頂いた方のデータのみを用いて集計・分析を行っています。研究成果は、研究に参加いただいた皆様の健康づくりに役立てていただくとともに、草津町及びわが国の保健福祉対策にも役立てられるよう還元しています。

 

2)研究結果の公表

「にっこり健診」を受診された皆様には、健診の個人結果票を返却していますが、全体的なデータ集計・分析結果に関しては、健診結果説明会などで一部ご報告しています。また、「いきいきアンケート」または「高齢者生活実態調査」から得られた全体の結果は、草津町高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画の中で報告しており、計画の策定にも活用されています。 結果の公表は、集団全体の分析結果のみであり、個人の結果が公表されることはありません。本事業より得られたデータの分析結果は、学会や学術雑誌、一般誌や書籍、東京都健康長寿医療センター研究所や日本動脈硬化縦断研究のホームページ等で順次公表していきます。また、草津町(保健センター)にも研究結果を還元しますので、町の広報誌やホームページ等で概要が公表されることがあります。

 

3)個人情報の保護について

本研究に関するデータの取り扱いは下記の通りです。

(1)草津町と研究所の間では「データ取扱い要領」を3年毎に交換して、個人番号(住民番号)、氏名、生年月日、住所などの個人情報が含まれたデータを町より研究所に提供していただいております。研究所では、研究ID(研究者側で作成した個人番号)を新たに作成し、その研究IDと個人番号(住民番号)とを突合した対応表を電子ファイルの形で作成しました。この対応表と個人情報が含まれたデータは厳重に保管されています。対応表と個人情報が含まれたデータは、当研究プロジェクトの研究責任者と研究担当者のみが必要時のみに取り扱えることとなっており、それ以外の人が取り扱うことはありません。
(2)研究データの作成および分析にあたっては、調査IDのみを使用しており、個人番号(住民番号)や氏名、住所、連絡先等の個人情報は含まれていません。そのため、データを使用して集計・解析を行う研究者が個人を特定することは出来ません。
(3)外部の組織と共同研究をしており、匿名化したデータを提供する場合があります。
(4)以上の個人情報の保護の取り扱いに関しては、東京都健康長寿医療センター研究所の研究倫理委員会の承認を受けて実施しております。

以上のことから、本研究事業に係る個人情報が外部に知られたり、個人の結果が公表されることはありません。したがって、この研究により、健康モニターとして登録くださった住民の皆様が不利益を受けたり、何らかの危険性が生じたりする可能性は無いと考えます。 また、同意書にも記した通り、データの研究利用に同意した場合でも、いつでも同意撤回することができます。また、ある特定の健診・調査項目や医療・介護等データについて、ご自身のデータを研究データから削除して欲しい等の希望がある場合もお申し出ください。同意を撤回されたり、特定項目の研究利用を拒否されたからといって、皆様が何ら不利益を被ることはありませんのでご安心ください。いつでもお気軽に下記までご連絡ください。

 

4)問い合わせ先

東京都健康長寿医療センター研究所・社会参加と地域保健研究チーム
 研究責任者:北村明彦
 研究担当者:野藤悠、阿部巧
 電話番号 03-3964-3241(内線 4253)
 電話受付時間 月~金曜日 9:30 ~ 17:30